分譲賃貸マンションとは?メリット・デメリットやよくあるトラブルを徹底解説!
賃貸物件を探しているときに「分譲賃貸マンション」という文言を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。分譲賃貸マンションは、全戸賃貸として貸し出されているマンションと比べると、建物の構造や設備などのグレードが高いというメリットがあります。
メリットが多い一方で、デメリットも存在します。そこで今回は、分譲賃貸マンションのメリットとデメリットや、起こりやすいトラブルについて徹底解説していきます。
分譲賃貸マンションとは
分譲賃貸マンションとは、何らかの事情で分譲用マンションの一戸を賃貸物件として貸し出しているものを指します。その理由としては、転勤による引っ越しや投資目的などがほとんどです。
賃貸マンションの場合は、一棟丸ごと同じオーナーであることが一般的ですが、分譲賃貸マンションの場合は、購入した所有者がオーナーとなります。たとえば、101号室と102号室ではオーナーが異なります。
分譲賃貸マンションは、設備や建物の性能が高い点がメリットと言われています。しかし、物件によっては、そうとも言い切れないこともあります。
そもそも分譲マンションには、大きく分けて「所有者の居住を前提として造られたもの」と「投資用物件として造られたもの」の2種類があります。ただし、なかには一般居住用に建てられた分譲マンションを投資目的で購入し、賃貸経営している投資家も存在します。
投資用物件として建てられた分譲マンションは、建築コストを最小限に抑えていることが多いため、必ずしも最新モデルが導入されているとは限りません。
しかし、インターネット上に掲載されている分、譲賃貸マンションが居住目的なのか、投資目的なのかは、一目で判断することが難しいため、設備の仕様や構造については入念にチェックしましょう。
居住を目的として建てられた分譲マンションは、比較的設備や構造などのグレードが高いので、ファミリー層から人気があります。
分譲賃貸マンションに住むメリット
分譲賃貸マンションに住むことで得られるメリットについて詳しく解説します。
物件のクオリティが高い(耐震性・防音性)
マンションでよくあるトラブルとして、騒音問題が挙げられます。静かに生活しているつもりであっても、階下や両隣の部屋には足音や話し声が響いてしまうことがあります。
しかし、分譲賃貸マンションの場合は、元々マイホームの購入者をターゲットとしているため、構造がしっかりしています。天井や床には「二重床」や「二重天井」を採用していることが多いので、防音性に優れています。また、コンクリート壁が厚いので、遮音性が高いという特徴を持ちます。
分譲マンションは長期的な居住を想定して造られているため、耐震性能にもこだわっていることがほとんどです。太い柱や梁を使用しており、大きな地震の揺れにも耐えられるほど、頑丈な構造でできています。
また、なかには制振装置や免震装置が搭載していることもあるため、一般的な賃貸マンションよりも高い耐震性となっています。
室内や共有部の設備が充実している
賃貸マンションは投資を目的として建てられているため、設備にかかるコストを極力抑えています。備え付けの設備に関しては、大量生産の製品がほとんどです。
一方で、分譲賃貸マンションは、元々長期的な居住を想定しているので、最新モデルの設備が導入されています。食器洗浄乾燥機や床暖房など、生活の利便性が高まる設備が導入されていることもあります。
そのほかに分譲賃貸マンションに多く採用されている設備・サービスとしては、生ごみを粉砕する「ディスポーザー」や、家電をインターネットに接続できる「IoTシステム」フロントに専任スタッフが常駐している「コンシェルジュサービス」などが挙げられます。室内や共有部の設備が充実しているので、暮らしやすいと言えます。
セキュリティが優れている
分譲賃貸マンションは、一般的な賃貸マンションと比べてセキュリティ体制が万全です。オートロックキーや防犯カメラなどの基本的対策が施されています。
なかには、ピッキングされづらいディンプルキーなどが搭載されていることもあります。また、訪問先のフロア以外には停止しないエレベーターのフロアカット機能を搭載するなど、マンション全体でセキュリティ対策が施されているので、不審者による建物内への侵入を防止できます。
そのほかに導入されていることの多い防犯対策としては「トリプルセキュリティ」や「ダブルロック」「合わせガラス」などが挙げられます。
住人のマナーが比較的良い
分譲マンションは、住人のマナー意識が高いという特徴を持ちます。もちろん賃貸マンションでもルールを守って生活している方は多いですが、入転居の頻度が高いので、マナーが悪い住人が引っ越してくる可能性もあります。
一方で、分譲マンションは、長期的な居住を前提としている住人がほとんどなので、トラブルを起こしたくないと考える方が多く、マナーを遵守している傾向にあります。そのため、分譲賃貸マンションは、子育て世帯にもおすすめです。
分譲賃貸マンションに住むデメリット
分譲賃貸マンションには、さまざまなメリットがありますが、デメリットも存在します。分譲賃貸マンションのデメリットについて解説します。
一般的な賃貸マンションよりも家賃が高くなりやすい
分譲賃貸マンションは、設備や構造の仕様がハイグレードな分、家賃も高い傾向にあります。分譲マンションの所有者は、住宅ローンを組んで物件を購入していることが多く、毎月住宅ローンの返済を行っています。
貸し出しているオーナーは、この住宅ローンの返済額を基に家賃を設定しているため、購入額の高いマンションは家賃も高くなります。そのため、分譲賃貸マンションにおいては、賃料の値下げ交渉は厳しいと考えてよいでしょう。
物件数が少ない
分譲賃貸マンションは、賃貸マンションと比べると物件数が少ない点がデメリットと言えます。立地や家賃、設備などの希望条件がいくつかある場合には、該当する物件が見つからない可能性があります。
とくに人気のエリアでの優良物件は、すぐに入居者が決まってしまうので、気になる物件を見つけた場合には、すぐに申し込みを済ませることをおすすめします。
分譲賃貸特有のトラブルがある
分譲賃貸マンションは、不動産賃貸業の経験が浅いオーナーが貸主になることが多く、特有のトラブルが起こりやすいので、要注意です。分譲賃貸マンションで起こりがちなトラブルについて解説します。
・オーナーとの規約だけではなく、マンション全体としての規約がある
分譲賃貸マンションでは、守らなければならない規約が多いので、注意しましょう。なぜなら、マンションで定められた規約とは別で、オーナーとの間で交わされる規約があるからです。
マンションで定められた規約とは、マンションの管理組合による「管理規約」や「使用細則」などが該当します。これらのルールは、どの入居者も一律で守る必要があります。
なお、管理規約や使用細則には、ゴミ処理や駐車場・駐輪場などの使用に関する事項が規定されており、一般的な賃貸マンションに住んだことのある方は、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
一方で、オーナーが独自で定めている規約は、管理規約や使用細則とは異なり、貸し出されている一戸でのみ適用されます。
たとえば、ペットの飼育が認められている物件であっても、オーナーの考え方によっては、飼育ができないなどのケースがあります。マンション全体での規約とオーナーが独自で設定している規約との二重のルールを守らなければならないので、注意しましょう。
・期限付き契約の場合は更新できない(定期借家契約)
分譲賃貸マンションには、あらかじめ貸し出し期限が設定されているケースがあります。オーナーの仕事の都合などで、一時的に貸し出している契約は「定期借家契約」と呼ばれています。
定期借家契約を結んだ場合には、契約期間終了後に契約更新することができません。期限までに物件を返還する必要があります。
しかし、定期借家契約は、借りられる期限が限定されていることから、賃料が安いというメリットもあります。なかには、相場の8割程度で借りられる物件もあります。
分譲賃貸マンションに短期間住みたいという方にとっては、かえってメリットにもなり得ます。
・オーナーが素人の場合、トラブル時に対応が遅れる可能性がある
設備の故障や不具合が生じた際、不動産賃貸業の経験が浅いオーナーの場合は、対応が遅れる可能性があります。手慣れたオーナーであれば、管理会社や水道業者などに連絡してくれますが、賃貸業が本業でないオーナーの場合は、スムーズな対応は期待できないでしょう。
トラブルや不具合が起こることを想定したうえで、前もって対応については確認しておきましょう。
分譲賃貸マンションでよくあるトラブルとその対策
分譲賃貸マンションで、起こりがちなトラブルとしては「マンション規約を遵守していたにも関わらず、オーナーとの契約違反であった」というものや「居住中に物件の返還を求められた」というものが挙げられます。これらのトラブルを予防するための対策について詳しく解説します。
マンション規約と契約内容の両方をよく確認する
分譲賃貸マンションを借りる際には、マンション規約と合わせてオーナー独自の契約について、内容を確認するようにしましょう。ルールが二重に課されていることもあるため、詳細を把握しておくように努めましょう。
たとえば、ペット可の分譲マンションであっても、貸し出しているオーナーによっては、飼育が禁止されているケースがあります。マンション規約のみに則ってペットを飼育してしまうと、オーナーとのトラブルにつながりかねません。
また、反対に動物が苦手という方が、オーナーとの規約のみ確認して契約してしまうと、マンション内でペットを連れた住人と遭遇してしまったり、ペットの鳴き声による騒音トラブルに悩まされたりする恐れがあります。
また、物件によっては、独自の行事を開催しているところもあります。よくある例としては、マンション住人で集まって敷地内の清掃を行ったり、季節ごとのイベントを開催したり、住人同士の交流を図る内容がほとんどです。
分譲マンションを賃貸として契約している方も参加義務が生じたり、設営や片付けなどのお手伝いを求められたりする可能性があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
普通借家契約か定期借家契約かを事前に確認する
「分譲賃貸マンションに居住していたら、突然物件の返還を求められた」というトラブルを耳にしたことのある方もいるかもしれません。その原因としては、普通借家契約を結んでいるつもりが、定期借家契約を結んでいたと考えられます。
普通借家契約では、契約期間終了後に契約更新を選択することができますが、定期借家契約では、居住できる期間が制限されています。通学や通勤などの事情で、契約更新を希望する場合であっても、定期借家契約を結んでいるケースでは難しいでしょう。
また、老後に契約期間が終了した場合には、新たに住居を探すのが困難になることもあるため、前もって契約する分譲賃貸マンションが普通借家契約なのか、それとも定期借家契約なのか、きちんと確認しておきましょう。
なお、いずれの場合も、契約期間の終了などによって返還する際には、室内を元の状態に戻す必要があります。これを原状回復と呼びます。
原状回復しなければならない箇所は、故意や過失によるキズ・汚れです。日常生活におけるキズや汚れについては、回復義務の対象から外れます。
しかし、貸主によっては、貸した時の状態と遜色ない状態で返還されると誤認しているケースもあります。一般的には回復義務が認められないとされるキズであっても、オーナーとの間でトラブルに発展する可能性があります。
こうしたトラブルを避けるためには、契約前に原状回復に関する取り決めを交わしておくことが大切です。また、オーナーによっては特約を設けていることもあるため、賃貸契約書の特約事項についてチェックしておくと良いでしょう。
不動産管理会社が介在しているか確認する
一般的に、不動産売買の際には、売主は買主に対して、重要事項を説明する義務があります。しかし、分譲賃貸マンションのオーナーには、重要事項を説明する義務はありません。借主が重要事項を知らないまま入居してしまうと、重大なトラブルにもつながりかねません。
オーナーとの直接契約には、仲介手数料が掛からないというメリットがありますが、契約後のトラブルを防ぐためには、不動産管理会社を介入することをおすすめします。不動産管理会社には、仲介業務を行う際に、宅地建物取引士による重要事項の説明を行う義務があります。
また、入居後に生じた不具合やトラブルなどについても、プロに相談できるので安心して暮らせます。分譲賃貸マンションを借りる際には、不動産管理会社が介在しているかどうか、必ず確認しましょう。
分譲賃貸マンションを探すときのポイント
分譲賃貸マンションは、物件数がそれほど多いわけではないため、探し方には工夫が必要です。希望するエリアにある不動産屋さんに問い合わせるのも一つの手ですが、インターネット上には数多くの物件情報が掲載されているので、より効率的に分譲賃貸マンションを見つけられます。
不動産情報サイトで検索する際には「分譲賃貸」というキーワードでの検索がおすすめです。また、建物の種別は「マンション」や「アパート」などから選択しましょう。
ポータルサイトによっては、詳細条件の中に「分譲賃貸」の選択肢が用意されていることもあります。分譲賃貸として貸し出されている物件のみに絞って検索できるので、ぜひ活用しましょう。
しかし、いくら物件数が少ないからといって、焦って決断するのは禁物です。希望エリアはもちろん、交通の便や周辺環境、治安面なども踏まえて総合的に判断しましょう。
また、気になる物件が見つかったら、必ず契約書について細かくチェックしましょう。万が一トラブルが発生した際には、契約書の内容に基づいて判断することになります。
とくに、トラブルが起こりやすいとされる「契約期間」「契約の種類(普通借家契約もしくは定期借家契約)」「原状回復の費用負担」「設備の不具合に対する費用負担」「マンション規約とオーナー独自の規定」などの項目は、入念に確認しましょう。
分譲賃貸マンションには、魅力的な要素が数多くありますが、デメリットも存在します。構造や設備のグレードが高い分、家賃が高かったり、季節のイベントや清掃活動など、住人同士の交流が盛んであったりと、人によっては暮らしづらい側面もあるかもしれません。分譲マンション特有のマナーやルールなども存在するため、入居前にあらゆる項目を確認することが大切です。
さらに、重要なのは、不動産管理会社が介在するかどうかという点です。オーナーが不動産賃貸業について経験が浅い場合には、不動産管理会社が仲介することで、トラブルや不具合についてスムーズに解決できます。
トラブルが発生した際の窓口としての役割も担っているため、万が一、オーナーと衝突が起きた際にも頼ることができます。
まとめ
今回は、分譲賃貸マンションについて、メリット・デメリット、よくあるトラブルなどを解説しました。分譲賃貸マンションとは、分譲マンションの買主が何らかの事情で、貸し出している物件を指します。
転勤による引っ越しや投資目的などの事情で貸し出されているケースが一般的です。分譲賃貸マンションは、長期的に暮らすことを想定されているため、室内の設備が充実していたり、構造が頑丈であったりという特徴があります。
マンションによっては、最先端のIoTシステムなどを導入していることもあり、快適に暮らせるでしょう。しかし、その分家賃が高くなる傾向にあります。
メリットとデメリットの両面を把握した上で検討しましょう。